節目ともいえる第5回公演は、「劇団大地の牙」より杉野卓身さん・ゆうこさん・橿原神宮前、「神撰組」より上田幸治さん、「C.S.P.L.」より才木典泰と5名もの客演をお迎えし、賑々しく華やかな舞台となりました。のちに橿原神宮前と才木典泰はヒポポに入団しますが。
会員制クラブ「オキタ」(黒門市場の近くであることが2で判明)の従業員休憩室が舞台のため、女性は皆ドレス姿。しかも最大で9名が同時に舞台上で踊るシーンもあったり、ミラーボールは回るわピンスポットは暴れるわ、まさにお祭り騒ぎな公演でした。まあヒポポはだいたいいつもお祭りですが。
しかし絢爛な舞台の影には血のにじむような努力があるものです。ピンヒール、ウィッグ、ドレスで走り回る茉莉花とゆうこさんは足にも腰にもダメージを食らい続け、アクセサリーでかぶれたりもしました。
今までにないダンスシーンのためにかなりの時間を割き、テレビから流れる韓国語講座に熱中し、ソウジ役の小谷智久は長台詞でビミョーな関西弁にがんじがらめになり……
それにしても受付スタッフから音響・照明にいたるまで、皆それぞれに衣装の指令が出たのは後にも先にもオキタだけですね。二階でチャイナドレスの美女がピンスポットを操作してるなんてもったいない話で。
あと、初代オキタの遺産といえば「スーさん」でしょう! 忙しくて本編には出演できなかったオンケンが、オキタの常連「スーさん」に扮し、開演前にそれとなく注意事項をご案内。頭にネクタイ巻いた典型的な酔っ払い姿が絶賛の的。そしてなにより、台本なしのぶっつけ本番にもかかわらず、ハジけまくった酔っ払いっぷりに劇団員も激笑。これはオイシイ!ということで、お手伝いに来てくれていた大地の牙の松木陽子さんも「マダム楊」なる謎のキャラ(スーさんの妻らしい)で参戦。あまり人前に出たがらないタケチチまで引っ張り出され、時間ぎりぎりまで繰り返される前説のリハーサル……もちろん演出家のダメ出しつき(笑)。
オキタは「前説も芝居のうち!」という不文律とともに、「前説に起用+宴会参加=入団手続き」という強引な方程式をも作り上げました。
公演タイトル クラブオキタ
脚本 山本由香里
演出 山本由香里
公演日 2002年2月16日(土)・17日(日)
キャスト
朱実:茉莉花
珠美:ゆうこ(劇団大地の牙)
イサミ:杉野卓身(劇団大地の牙)
小百合:西原希蓉美
ソウジ:小谷智久
本田:上田幸治(神撰組)
山下:才木典泰(C.S.P.L.)
坂本:倉雅幸
シゲル:橿原神宮前(劇団大地の牙)
サチコ:山本由香里
スタッフ
音響:才木典泰
音響補佐:山本史(劇団大地の牙)
照明:亀本洋子
照明補佐:山岡希世子
スチール:タケチチ
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川のほとり。銃の密売で警察に追われるタツオと、その恋人のかおり。かおりは薬物中毒の後遺症か、夢うつつの世界に生きている。それでも二人は幸せだったし、お互いになくてはならない存在だった。しかし捜査の手は着々とタツオを追い詰めており、覚悟を決めたタツオは、かおりが自分のことを忘れてくれればと、スケコマシで通る舎弟のサトルを呼び出す……
別れの予感の中で、それでも相手を想い続け、「一緒にお月さん行こう」と呼び交わす二人。それを見守る高校時代の担任・村上。女をたぶらかしては風俗へ送り込む毎日に、すさみかけているサトル。サトルに騙されそうになる女子高生・智美。智美にひそかな想いを寄せる担任の渡辺。「人を想うこと」「想いを受けとめること」の大切さや難しさを、それぞれに抱え、影響しあう人々の、すこし切ない物語です。
「オリオンの夜」で音響をお願いした縁で、才木典泰に脚本・演出を一任しました。今のところ、オリジナルとしてはヒポポで唯一、男性作家の作品となっています。
芝居の導入は、前説に立った男がタツオの幼馴染でもある刑事・秋山として、さり気なく台詞へ移行するというもの。思えばここから「前説小芝居」が受け継がれているのかも。
普段のキャラクターから、どうしても3枚目な役が回りがちなオンケンが渋いヤクザ役を。茉莉花も難しい役でかなり難渋しましたが、それに見合うだけの評価も頂けたように思います。また、このとき初参加の西原希蓉美はその容姿を存分に生かした女子高生役で、主に劇団員男性陣のハートをがっちりゲット(笑)。「演出、目つきいやらしい」は伝説的名言です。
練習場の思い出はというと、これがまたオンケンの独壇場。普段のキャラとヤクザという役柄のギャップ、でもやっぱり天然なトチリでギャップ相乗効果。恋人を抱き寄せるシーンでは、手が茉莉花の肩から3センチ浮いてるし。稽古が進んで、すっかり「かおり」として「タツオちゃん」を愛する茉莉花としては、ほんのり侘しかったとか(笑)。秋山刑事に連れられて去るときの、万感込めた「バイバイ」って台詞も、なんやしらん笑顔やし。かおりちゃん泣いてるっちゅーねん。
あと、作・演出の才木典泰は、実はかなりの競馬好き。公演日でも朝一番に馬券を買ってから小屋入りすることもあるほどです。で、芝居中でタツオがかおりに贈ったものは、名馬「ナイスネイチャー」のぬいぐるみ(UFOキャッチャーによく入ってたようなやつ)。ウサギのぬいぐるみでもよさそうなもんだがなあ……
で、と。この頃からカメラマンのタケチチが参加したので、いい写真が数多く残されるようになりました。
公演タイトル RIVER
脚本 才木典泰
演出 才木典泰
公演日 2001年8月11日(土)・12日(日)
キャスト
タツオ:陰地賢一
かおり:茉莉花
サトル:岡勝己
村上:山本由香里
渡辺:小谷智久
智美:西原希蓉美
秋山:才木典泰/倉雅幸(ダブルキャスト)
スタッフ
音響・舞台監督:南忍(大地の牙)
照明:亀本洋子
スチール:タケチチ
とある山のてっぺんに、萬御助観音菩薩を本尊とする「駆け込み寺」がありました。しかし住職である賢三は旅に出たっきり。その母である末(88才)がひとりで寺を守っていました。大晦日、そこへ賢三の娘・須弥子が里帰りしてきます。祖母と孫、ふたりでのんびり年越しを……と思っていたところが、駆け込み寺の面目躍如、闖入者が続出。
嫉妬に狂った妻から、命からがら逃げてきた吾郎(オッサンホスト)。それを追う妻・玉輝(ド近眼のヒグマ)。国宝の菩薩像を盗もうと侵入した浩生(孤児)。そして、須弥子に求婚する尚行(真面目バカ)も訪ねてきます。
思いの行き違いから、殴る蹴るどつくの(一方的な)痴話喧嘩を繰り広げる玉輝と吾郎。その合間を縫って、不幸な出生の浩生が「ホンコン・マカオの旅」への執着を語り、須弥子は尚行との結婚に踏み切れず……
賢三とその亡き妻・冴子を含めた、さまざまな家族のかたち。オリオン座は南天に輝き、南港から汽笛が聞こえる大晦日の夜の物語でした。
今なお続編が山本の脳内でぐるぐるスタンバイ中という、現在のヒポポの路線をほぼ決定づけたエンタテイメントな作品。お末ばあさんというハマリ役も生まれました。岡勝己はこのときが初舞台。橿原神宮前を客演に招き、音響・照明スタッフについても、継続的にご一緒できる人たちと出会うことができました。
記憶に残るできごとといえば、まずは仏像姿があまりにも違和感なかった(笑)オンケンこと陰地賢一。ていうか数珠も錫杖も自前ってどういうことですか。
楽日の舞台で、もう思い残すことはない、とばかりに衣装をズタボロに切り裂かれて嬉々としていた(!?)橿原神宮前。あのときのあなたは確実に輝いてたよ、パパン。
公演タイトル オリオンの夜
脚本 山本由香里
演出 山本由香里
公演日 2001年2月24日(土)・25日(日)
キャスト
須弥子:茉莉花
末:山本由香里
吾郎:橿原神宮前
玉輝:摩純
尚行:小谷智久
浩生:岡勝己
賢三:陰地賢一
スタッフ
音響:才木典泰
照明:亀本洋子